今年になってスマホ、時計に続いての物入りな話です。先月の事になりますが、自分の不注意でテレビの液晶パネルを割ってしまったのです、先日の時計は寿命だったと諦めてますが、2010年11月に買ったシャープのAQUOSの32型、丁度地デジ移行とエコポイントの最中ですよね、13年使っていた訳ですがリモコンが悪くなっただけで不具合もなく、最近の製品がどれ程のものかは知りませんが画質にも満足してました。強いて云えば最近BS/CSが映らなくなった事とAMAZON FireTV stick が時々ハングアップする事、BS/CSはアンテナのせいみたいですし、FireTV stick は2016年に買った初期の製品で、動作が不安定になったりハングアップしたりと、そろそろ買い換えないといけないかなとは思っていた処なのですが、地上波TVを見ている分には全く以って問題はなかったのです。
前面の保護ガラスには傷すらないのですが、内側の液晶パネルがご覧の様に画面右下から放射状にひびが入って割れていて画面下半分は幾何学模様に覆われてしまっています。取り敢えず見たかった番組はDVDレコーダーに録画していましたが、日が経つにつれて見えない部分が大きくなってきて、録画設定のための番組表を見るのもおぼつかなくなってきました。今時の事ですから修理代の方が高くつくのが目に見えています。
月が変わった処で、思い切って買い換える決心をして色々と調べていたのですが、最近はチューナーレスとかネット配信対応とかが出てきているのですね、同じ32型ならかなり安くなっています。レコーダーがチューナーを内蔵しているので格安なチューナーレスでも良いのですが、いずれ FireTV stick を買い換える事を考えるとネット対応のいわゆる Google TV を買った方が良さそうな計算になります。Google TV の位置づけも良く判らないのですが、FireTV stick の代わりにはなる訳で、ちゃんと Prime Video も見られて契約すれば他のネット配信サービスも観る事ができる訳ですから。
AMAZON で一番安くて良さそうな GREEN HOUSE製、マイナーなメーカーですがPC用モニターは随分昔からやってますし、そう悪い話も聞かないので、28,081円也。
ポチったら翌朝届く様な時代ですからね、さっそく場所の確保、と云ってもほぼ同じサイズですから以前に作ったラックに載せかえるだけですから、壊れたシャープのAQUOSを引っ張り出しておきます、今度のはベゼルレスになっている分同じ32型でも一回りとまでは行かずとも筐体サイズが少し小さい様です。
ところで何で液晶パネルを割ってしまったのか、お恥ずかしい話ですが狭い部屋の事でテレビでメンテナンススタンドを置いてErba号の組み付けをやっていてうっかり倒してしまったのです、フォークの先端がパネルを直撃、情けない話です。
朝、顔なじみのクロネコのドライバーが大きな箱を軽そうに抱えてやってきました、受け取ると、軽う~、驚きの軽さに大丈夫なんかと心配になります。設置は問題なく棚板を一段上げられる余裕です。Google TV と云う事で設定には少々時間がかかりましたが、アンテナ不良のBS/CS受信以外はその日の内に無事に設定完了したのですが。
と云う訳で買い替えて2週間程になるのですが、正直云って画質に関しては第一印象は13年もののAQUOSの方が良い様な、輝度が自動調整になっていると部屋の明るい時には白トビが気になります、これは暗めに固定しておけば気にならなくなりましたが、音質は最悪、内蔵スピーカーはモニターだと諦め手持ちのPC用スピーカーを接続します。とにかくマニュアルと設定の操作が判り難くて説明が不十分、PCモニターで実績はあってもテレビとなると作り込みの足らなさが、そしてGREEN HOUSE社はリモコンの設定コードを持っていないので汎用品や他社のDVDレコーダーのリモコンで操作する事ができません、もうこれは慣れるしかないです。まぁ良かったのは AMAZON Prime や YouTubu がスムーズに観られる様になった事と消費電力が 110wから60wになった位でしょうか。
「映画」カテゴリーアーカイブ
5月11日の日記
今日は休日なのですが、昨日走った事ですし、自転車は日常生活の足として。延陽伯号を駆ってまずは横大路(竹之内街道〜初瀬街道)を西へ、大和高田のかかりつけの酒本先生の処へ、しかし勿体ないお天気です。
4月28日からロードショウされていた映画「せかいのおきく」、奈良県下では橿原アルルのTOHOシネマズが唯一の上映画館でした、今日11日が最終日、8日にも時間があったのですが、バリアフリー日本語字幕が付いての上映だったのでパス、と云うより最近はそんなのがある事を知った次第。今どきの事ですからデジタルでしょうが、作品はいわゆる35mmスタンダードサイズのそれもモノクロ作品(ネタバレになるかも知れませんが厳密にはパートカラー)。カラー作品が当たり前になった1960年代以降もモノクロ作品は洋画には「シンドラーのリスト」を始め結構ありますが、邦画となると小林正樹監督の「切腹」(1963)、森谷司郎監督の「首」(1968)年以降ちょっと思い付きません。映画に限らずモノクロ表現に対してノスタルジックなと云った表現がありますが、テレビも写真もモノクロが当たり前だった時代に育った私の世代と、モノクロ表現もエフェクトの一つだろう今の世代とでは違うのでしょうね。また「せかいのおきく」では「肥え」が重要なアイテムですが、通学路にあった畑の片隅には野壺があり、夏休みに明日香村の母方の実家で過ごし、祖父の牽く肥えの入った桶を積んだリヤカーを推した経験のある自分には、この映画はあまりにリアル過ぎて…
で映画はどうだったのと聞かれるとね、素晴らしい作品だと思いますし、肥えを積んだ天満船が輝く川面を滑るシーンなどモノクロならではの映像美、ただ全体的には評価が別れるでしょうね。私には父親と声を失った主人公「おきく」の変わり様が十分には納得できません。いずれにせよ日本映画ファンは見ておきたい映画です。
肥えを汲み移す時のドボドボと云う音があまりにリアル過ぎて、こと音に関して非常に拘りが感じられ、映画館で観た価値はそこにあったかも。
終演が14時半、遅くなりましたが帰り道に4seasonに寄って遅い昼食を、ところで4seasonが今年の「モバイルグランフォンド奈良・吉野」のチェックポイントになっています。本日の走行26.2キロで今月は既に400キロ超、明日からお天気は下り坂とかで500キロで折り返すのは無理かな。
そうそう昨日頼んでいたムックが届いていました、最近は紙の本を買う機会が少なくなってしまいましたが、鉄なサイクリストにはなかなかお勧めの一冊です。関西では阪堺電車、京阪京津線、近江鉄道、関西本線が紹介されていますが、遠いところで篠ノ井線旧線、わたらせ渓谷鉄道、久比岐自転車道。一畑電車、メイプル耶馬サイクリングロード、宮原線廃線跡が興味深いです、九州は遠いけど篠ノ井線旧線は夏に考えてみようかな…
CycleSports「鉄道と自転車の旅」Ril &Ride
8月24日の日記「凪の島」と「ハウ」
先日、たまには映画館の大きなスクリーンで映画を観てみたいとボヤいたら、ひょんな事でなんばパークスシネマの無料クーポンを賜った、今ではシニア割引で1,200円で観る事もできるのに、大阪なんばまで往復1,400円の電車賃をついでもないのに出してわざわざ出掛けるのも、なんだかなと思いもしたが、奈良では上映予定のないマイナーな邦画が架かっているので、お昼から出掛ける事に。
なんば高島屋前、御堂筋に自転車レーンが、梅田から続いているのなら価値あるけど。ぐぐってみるとなんでも2018年に期間限定で社会実験として「御堂筋の南側の東の側道を閉鎖して、自転車、歩行者専用道としています。道頓堀橋北詰~難波西口交差点間の400mの区間」とありましたが…
「青空のゆくえ」(2005)、夜のピクニック(2006)の長澤雅彦監督の最新作「凪の島」、舞台は瀬戸内海に浮かぶ「深浦島」(仮名)、ロケは主に山口県下松市沖の笠戸島で行われていますが、瀬戸内と云うより周防灘を挟んで国東半島を望む辺りになります。いわゆるご当地映画な処もあって柳井市の白壁通りの「金魚提灯まつり」なんかもでてきますが、同監督の「天国はまだ遠く」(2008)やチアン・ショウチョン監督、永作博美主演の「さいはてにて やさしい香りと待ちながら」(2014)の様に、この風景を見てみたいとか、この土地を訪れてみたいと思わせる力はない。観ようと思ったきっかけは主人公の少女’凪’の離婚した両親役に「天国はまだ遠く」で共演したチュートリアルの徳井義実に加藤ローサが出演していた事、それに期待したらしっかり裏切られます、役としては好演だったとは思いますが。瀬尾まいこ原作の「天国」との物語の差は大きいですが、良くも悪くもどこを切っても長澤作品ですが、映画館のスクリーンで観る程の作品ではなかったです。
些か物足りないので、劇場の予告編で観た「ハウ」がなかなか面白そう、せっかく大阪まで出てきた事ですしハシゴする事に。ただ1時間ほど時間がありますし時間もじかんです日本橋の「松のや」まで往復して「ダブルロースカツ定食」を、日頃は激安の「得朝とんんかつ定食」ですからね、それでも880円は安い!
「ジョゼと虎と魚たち」「眉山-びざん-」「のぼうの城」の犬童一心監督の最新作「ハウ」白い大型のムク犬「ハウ」のロードムービー、だけならありきたりですが、やはりこの手の動物ものは泣けますね、特に大型犬を飼った経験のある人にはお勧め。主人公が「ブン」になった「ハウ」と別れるシーン(ネタバレ?)に食らったけど。宮本信子、石橋蓮司、最後の最後に田畑智子と脇役陣が良いねぇ、修道女役の市川実日子が「八日目の蝉」とかぶりますね。
映画の後、法善寺横町へ、家族一同親子二代の付き合いもあった事ですし、母の亡くなった事の報告がてら法善寺の「TARO」に寄って少し飲んで帰ろうかと思ったら何故かCLOSE、先代のマスターはまず休む事なんてなかったのですが… 大阪難波2110発の松阪行き近鉄特急で帰途に就きました。
8月15日の日記
盆も正月もない業種ですので、変わらず業務に就いているのですが、今日はたまたま休日、お天気も悪くなさそうなんですが、疲れがたまっているのか体調がすぐれません、先日の「東吉野サイク」は良いカンフル剤にはなったのですがね。先月から手を付けている道路元標DBの改修作業は停まったまま、マップの方は概ね巧く行ったので後は画像の転送とスタイルシートなんですが。この8月27日で意識して道路元標を巡りはじめて16年、それまでに格好をつけたかったのですが…
な訳で休みはごろごろとAmazon Primeで映画三昧、見たいものは有料コンテンツだったりして悩ましい処ですが、「マジェスティック」(2001)「レリック」(1997)「J.エドガー」(2011)「ミスト」(2007)「スタンド・バイ・ミー」(1986)「ニューヨーク東8番街の奇跡」(1987)と洋画三昧。「マジェスティック」と「レリック」はお気に入りの名脇役 James Whitmore 繋がり、「マジェスティック」はF.ダラボン監督の「ショーシャンクの空に」(1994)「グリーンマイル」(1999)に続く作品で、名作だと思うけど記憶を失った男に廃れた映画館、戦後ハリウッドでの赤狩りとお題が揃って筋書きができすぎなのが評価が今一の理由なのかな。「レリック」SFホラーは「エイリアン」でできる事は全部やっちまったからね。「J.エドガー」C.イーストウッドが監督を務めたFBIフーバー長官の伝記もの、展開が冗長で途中で寝てしまった、有料コンテンツなのでもう一度見直したけどやはり今一つ。「ミスト」と名作「スタンド・バイ・ミー」は「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」同様S.キング原作の映画化。
ところで James Whitmore って1953年のミュージカル「キス・ミー・ケイト」の頓馬なギャング役で初めて知ったのだけど若いころは西部劇や戦記物で活躍、晩年は前述の通り。ところで輪友のつっちーさんに似てるよね。
自宅でゴロゴロしながら見るのも良いけど、映画館のスクリーンで見たいよね、映画。
3回目のワクチン接種とか
昨日は3回目のコロナワクチン接種でした、うちの職場では今回もファイザーで月曜から始まっていて、2回目で副反応がきつかった人はより強くでるとか話題になっていますが、高田のS先生の処では2回目と同程度かそれ以下って事なんですけど。私は2回目は軽い痛みと倦怠感程度で済んでいるのですが、翌日は休みですのでおとなしくしてよって事で、またもや休足日に。
と云う事で美味しいものでも作ってネットで映画三昧しながらぬくぬくと過ごそうと、おでんを仕込みながら、いつもの「ギョーザ鍋」、そしてヤマザキのお菓子の詰め合わせ、ごろごろしながらAmazonプライム「東宝名画座チャンネル」の14日間無料キャンペーンで一連の黒澤作品を観ていたら… 体重が80kg台に戻ってしまったと云うオチ。しかし黒澤作品の他、森繁久彌や植木等の喜劇作品に若大将シリーズ、特撮ものの他に東宝作品に何があるのでしょうかね、月額390円は高くもないけど、今後公開されるラインアップが知りたい処、権利関係がややこしいかしてて全く観る事のできない「燃える秋」や同じく小林正樹監督の「日本の青春」なんかが出てくるならともかく、無料期間内で解約かな。さて副反応の方は発熱はもちろん倦怠感もなく、接種した左上腕の軽い痛みが翌日まで続いただけ、どうも年齢性別や関係なく個人差が大きいとしか。 久しぶりに紙の本を買いました、タイトルに惹かれてネットでですが、ハズレでしたね、資料的価値もなく、根拠の怪しい右回り理論をぶちあげて三流コラムの羅列って感じです。やはり本は本屋で見ながら買わなくっちゃ、興味のわきそうな本は大阪にでて大きな本屋に行かなくてはないし、それにワンフロアの大きな本屋はどうにも苦手、コーナーを探してたどり着くのさえ邪魔臭くなってしまいます、曽根崎署隣の旭屋本店があった頃は半日位過ごせたのですがね。
私を構成する9枚と9本
facebookで「私を構成する9枚」と「私を構成する9本」と云うハッシュタグがあったので作ってみました、もちらん9枚とはCD(LP)、9本とは映画の事ですね。

クリスマス・イブと云えば
山下達郎も悪くないですが、彼もカバーしている「ホワイト・クリスマス」は何と云ってもBing Crosby、なにしろ世界で5000万枚売れたと云うのですから、同名映画は1954年の米パラマウント作品、共演にはDanny Kaye(名前をぱくったのは亡くなった谷啓さん)、Rosemary Clooney(George Clooneyの伯母さん)。 アメリカが希望と自信にあふれ輝いていた時代の作品です。
毎年12月は「合唱」を聴いて、NHK-FMでパイロイト音楽祭のライブ録音を聴いて、この「ホワイト・クリスマス」のDVDを観るのが恒例行事です。
Irving Berlinのこの名曲、初出は1942年の「スイング・ホテル」(原題はHoliday Inn)、もちろんこちらも主演のBing CrosbyにFred Astaireが共演しています。
クリスマスを題材した映画は少なくないですが、邦画では源孝志監督の2005年作品「大停電の夜に」が一押し、イブの夜に5組の男女のストーリーが同時進行で絡んで行く、音楽は菊地成孔、オリジナル作品以外にもジャズの名曲「My Foolish Heart」が随所に使われています、もちろんBill Evansのアルバム「Waltz for Debby」の収録曲。 田畑智子が好演、手にする「Waltz for Debby」のレコードはRIVERSIDEのオリジナル盤だったとか。
真夏の早朝ポタ
「逃亡列車」
森谷司郎監督の「首」以来の’日本映画’カテゴリです、「首」も房総周辺のC58が出てきましたが、どちらかと’鉄ちゃん’ネタですね(^_^;)
昭和41年(1966年)12月公開の日活映画で、「鉄道ファン」誌で紹介されたので、中学生だった私ですがなんとロードショーで見ています。 今年は石原裕次郎23回忌とか、といっても全くの話題にもされない作品です。 で思い出した様に検索すると、ありましたありましたVHSで出ていたのですね、レンタルビデオ落ちをYahooで発見、競ることなく落とせました、少なくともオールド鉄道ファンには感涙ものの隠れた名作です。
小海線沿線でC56を使ってロケされたのは一目瞭然なのですが、シールドビームに架線注意のSLをバックに石原祐次郎が機関銃を構えるパッケージにケチを付けたりとマニアックな野暮は云わずに、舞台となる駅のセットや、実際の走行シーンと見どころたっぷり、フィクション作品とは云え、高林なんとかの作品より、余程にリアリティのある映像が随所にみられます。 共演者には伊藤雄之助、若かりし十朱幸代、と云うより少年にはロボタンのパパの娘さんと云う方が(^_^)
物語の舞台は終戦を迎えた南満州ですが、ロケ地の小海線野辺山高原も、今ではかなり様変わりしてしまっていますよね。
C56 112 や159が登場しますが、ボロボロにウェザリングされたC56 112は廃車体ではなく、当時はまだ現役だったはずなんですよ。 このC56を祐次郎率いる大映の「兵隊やくざ」みたいな連中が、修理して「逃亡」する訳なんです。
これって大門沢の鉄橋? まさか鉄橋まではセットやないのと思うので、爆破シーンは実際の鉄橋に煙幕だとは思うのですが。
貴重な35mmフィルム映像ですから、是非DVD化してほしいものです。
「燃えつきた地図」
「おとし穴」「砂の女」「他人の顔」に続く安部公房原作?勅使河原宏監督の4作目、ユニークなのは製作プロダクションが勅使河原プロではなく勝新太郎の勝プロなのである、東宝配給による1968年の公開だがDVDに収録されている当時の予告編には大映の配給となっている、勝夫人の中村玉緒も勝の演じる主人公の別居中の妻の役として出演しているが、契約関係と倒産前の大映がどうなっていたのか私は詳しくない。 前3作とは異なりカラー作品で、私は30年程前に自主上映会の小さなスクリーンで見ているのだが、原作でも印象的な主人公が運転する軽自動車(スバル360)が坂道を登って行くシーンと失踪者の妻、すなわち主人公の探偵へ調査依頼をした「女」役の女優が印象(嫌いなタイプだと云う事で)に残っている位だった。 実はこの女優は’春川ますみ’だとずっと記憶していたのだったのだが、実は’市原悦子’だった事を知ったのは最近の事である。 なお勝の主演ともにユニークなのは渥美清の出演で妄想癖の男を良く演じている、他に長山藍子、信欣三、吉田日出子が出演している。
なぜ勝がこの原作をとりあげ自らが主演する事になったのか、一映画ファンに過ぎない私には良く判らないが、それでも不可解な印象を持ってしまう、勝の演技そのものは決して云々されるものではないと思うが、映画のタッチそのものは粟津潔によるタイトルデザインを除けば勅使河原作品と云うより1960年代の大映娯楽作品そのものであり、安部作品の持つ時代を越えた普遍性のようなものは汲み取れない、少なくとも安部公房ファンが観て納得できるものではないだろう。
「首」
音楽にしろ映像作品にしろ、趣味的にも興味を持って長年関わると、個人的に思い入れのある作品やノスタルジックな感傷を持ってしまう作品がいくつかある。 「首」は1968年の東宝作品、ロードショーで見たのか、当時母親の入っていたタカシマヤ友の会の上映会で見たのか、さすがに記憶が曖昧なのだが、1968年当時では円谷特撮映画から「若大将」ものと多くがカラー化されていた時世に、鮮烈な白黒映像が今もなお印象に残っているものの、再び見る機会は40年近くもない。 決して大作ではないマイナーな作品だけに過去ビデオやDVD化された様子もなく、名画座や自主上映会などがないものか折々に気をつけていたのだが、ネットの時代でも「首」と云う短いタイトルは検索もしずらい、東宝作品ゆえフィルムが逸失してしまったなんて事はないだろうが、もしや二度とお目にかかる機会はないかも知れないとさえ思っていた。
監督は「八甲田山」や「日本沈没」を撮り1984年に53才で亡くなった森谷司郎、黒沢明監督のもとを離れ監督として独立して「赤頭巾ちゃん気をつけて」を撮るまでの初期の作品、原作は正木ひろし弁護士の実話小説でいわゆる「首なし事件」を題材にしている。 マイナーな作品と書いたが同年のキネマ旬報ベストテンでは「神々の深き欲望」「肉弾」「絞死刑」「黒部の太陽」と云った話題作大作に続いて第5位に入っている。 最近では「ツーカーS」のCMなんぞをやっているが、若かりし小林桂樹が主人公の弁護士役を演じていた。
実はその「首」がCSで放映される事を知ったが、CSを視聴する機器は持っていないので、あちこちあたるとS翁がケーブルテレビで見られると云う事で録画して貰う事になり(実はS翁はP女史に下請けに出したそうだが)、先日そのDVDを頂いた。
30数年ぶりの再開、確かに大作でもないし名作として名を連ねるものではないが、鮮烈な白黒映像、テンポの良いストーリー展開と充分に見応えのあるものだった、スタッフにはいわゆる黒沢組のメンバーが多く名を連ねているが、黒沢作品は初期作品からビデオ化DVD化され受け容れられるのに比べて、この作品が日の目を目見ないのが残念である。 スケールの大きな映像が求められ、悪く云えばコケ脅しばかりの最近の傾向ではこういった題材は映画どころかテレビドラマにもならないのかも知れないが、しっかりした作りの佳作秀作と云えるものである。
「日本の悪霊」
映画では「横川事件」そのものはストーリーの中に組み込まれているものの法廷シーンすらない、主人公村瀬と刑事落合が活動家崩れのヤクザと刑事として佐藤慶が一人二役を演じ、村瀬と落合の同一性を瓜二つの二人が入れ替わると云う筋立てにしている。
あまりに原作とのギャップが大き過ぎて些か混乱してしまって良く判らない、挿話の様に折々に現れる岡林信康が唄うシーン、70年代の匂いだけを感じながら、原作を引っ張り出してパラパラとめくってみたが、あえて好きな作家でもなかったし、いまさら高橋和己を読もうかと云う忍耐力はもう持ち合わせていなかった。
「砂の女」
横になるとずっと楽になるので寝てしまえば良いのに目が冴えていけない、で久しぶりにビデオなんぞを引っ張りだして見ていたら、結局最後まで見てしまった。
「砂の女」 岸田今日子と岡田英次が主演した勅使河原宏監督の1964年の白黒作品で、同年のキネマ旬報ベストテンで小林正樹監督の「怪談」を押さえて第1位に輝き、「飢餓海峡」が第5位となっている。 そしてカンヌでは審査員特別賞を受賞している。 さすがにロードショーは見ていないが、名画座か何かで映画館のスクリーンでも見た事がある。 余談だが「怪談」は岸恵子ファンの母親に連れられて見ている「黒髪」が怖かった事を鮮烈に覚えている、正直今見ても「リング」より怖い?。
原作はもちろん安部公房、私の最も好きな作家である、「砂の女」は安部公房の作品の中で最も一般受けする作品なのかも知れないが、映画も同じ勅使河原宏監督の「他人の顔」程の難解さはなく、何よりも背景も背景だが白黒映画の美しさをこれ程感じさせる映画は数少ない、武満徹の音楽(ミュージック・コンクレート)も素晴らしい。 原作に忠実な作品で安部公房作品の一貫したテーマである「存在証明」、岸田今日子演ずる「女」と「村」の関係、そしてその構造に取り込まれてしまった主人公、そして最後の「溜水装置」の研究に希望を見いだす主人公と彼の「失踪宣告」が感動的に表現されている。 何度見ても新鮮で感動的だ、ただ原作に忠実と書いたが安部公房作品に一貫して流れるテーマの様なものはいささか希薄になっている様に思える。 しかしもうこんな日本映画って作られる事はないのかななぁと、つくづく思ってしまう、安部公房作品を4本映画化した勅使河原宏監督はその晩年「利久」「豪姫」を監督するが、安部公房作品で再びメガホンをとる事なく4年前に亡くなってしまった、後年の安部公房作品「箱男」なんぞを映画化してほしかった。
PS:なおロードショー時は147分の作品だっがカンヌ出品時に124分に編集された。 現在ではDVDで147分版も見る事ができ、断続的にカットされた部分は決して冗長になっていた訳ではなく「能登の御陣所太鼓」のシーンを始め各所で非常に作品の内容を色濃く表現している。
見てから読むか、読んでから見るか、
先週、TVで磯村一路監督の最新作「解夏」が放映されていたが、その週の深夜には同監督の前作の「群青の夜の羽毛布」が放映されていた。 本上まなみが主演した事以外には話題性も少ないし、評価も決して良くなさそうな2001年の作品だが、若松孝二、神代辰巳門下で新東宝で苦労してきた監督だけあって、私にはトレンディな恋愛ドラマに終わってしまった「解夏」よりもずっと好ましい作品だった、決して演技力があるとは思えない本上まなみの魅力を自然に引き出して、主人公’さとる’を良く演じさせていた。 小日向文世の演じる父親の存在が希薄過ぎて背景が判りづらいとの評価もある様だが、私にはこれで充分な様に思えた、と云うより心を病んだ父親と’さとる’との関係が原作では’さとる’をカウンセラーと誤解している辺りがどうも不可解なのである。 あと興醒めだったのはエンディングの鬼束ちひろの歌、別に嫌いな訳でもないのだが...
山本文緒、OL層に人気とやらの今様な女流作家の作品、それだけでzとても読む気にもなれなかったが、映画のお陰かたまたま長時間列車に乗る予定もあったので、久しぶりに文庫本などを買ってみた。 映画の面白さもあって最後まで読み切ってしまったが、この作者の他の作品を読んでみようと云う気持ちまでは起こらなかった、原作と映画をいずれが先にせよ両方を読んだり見たりするのも面白いものであるが、過去に原作を読んでから映画を見た作品はいくつも思い浮かぶのだが、逆はなかなか思い浮かばない、やはり原作を先に読むべきなのかなぁ...
「スウィング・ガールズ」
矢口史靖監督は「ウォーダー・ボーイズ」の監督なのだが、「ウォーダー・ボーイズ」は気色悪くて見ていないので、作品は始めて。 しかしJAZZファンやいわゆる音楽映画ファンがそのつもりで見ると、漫画ギャグの連発にうろたえてしまうが、しかし面白い。 配役の中でで一番目に付いたのは主演?の上野樹里や木野花を始め適役揃いの脇役陣より、トロンボーンを担当する不器用そうな役どころの本仮屋ユイカ、どこかで見たなぁと思ったら今週から始まったNHKの朝の連ドラの主役だった。
少しダラつく部分もあるが最後の演奏会シーンで「ムーンライト・セレナーデ」、いささか字余りのドラムの後、始まるユニゾンは感涙ものである。
「笑う蛙」
「笑う蛙」、長塚京三、國村隼、これだけで見る価値は充分であった、大塚寧々はともかくとして雪村いづみにミッキー・カーチスと配役の妙も... 舞台作品風の展開と味付け、コメディタッチに話が進むのだが、やや大げさな演技にも日常的なマジさに笑えない面白さ。 機会があれば一見の価値はある、映画館で見たかったなと思いつつ、しかし「夫は妻を、永遠に抱きたいと思った。 妻は夫に、一度だけ抱かれたいと思った。 」なんて宣伝コピーには誘われなかっただろうな、興味を示す大多数の観客を騙しつつ日本映画は頑張っている。 原作とはかなり違う、いや全く違う仕上がりだそうで、しかしいつになく原作を読みたいと云う気持ちは全く起こらなかった、良い意味で映画は映画であると。